【理想と現実】

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団塊の世代と呼ばれる時期を生き抜いた上司の扱いは簡単だった。 コツはひたすら我慢する事だ。 彼らの根拠の無い自信と プライドを刺激してはいけない。 例えば やたらと煙草を吸ったり 休憩を取っている時がある。 無駄に責任感の強い彼らは 色々な事をキャパシティ以上に抱えすぎて 軽くフリーズしているのだろう。 そんな時は 僕から許可をもらう形で誘導する 具体的に ○○してもいいですか? と聞き それは自分がやるから他の事をしてくれよ 的な事を言われれば大成功 僕の思惑がはずれ ああ、頼む 的な事を言われても 指示を出していると錯覚させ 彼らの責任感を満たしてやれるので人付き合いとしては悪くない。 お前は何をやってるんだ? と文句が言いたくなる所だが そこは腹の内にしまい込んでおく 全ては潤滑な人間関係のため… いちいち指示をもらう僕の評価は あまり高くならないので 昇給には響いたが 歩合手当てがあるのでそれで我慢する。 ……十代を終える頃には 僕の金メッキは 鈍い輝きと厚みを増していた。
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