【幼き原初の風景】

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僕はよく彼女とお喋りをした。 『よく』 といっても すぐに彼女は周りのみんなに引っ張られて とられてしまったので 時間的にはほんの少しだ。 それでも手が空くと いつも自分の席に座っている 僕の方に寄ってきてくれた。 そんな物好きは彼女一人だった。 僕はそのためだけに学校に通っていた。 気付いたら年度皆勤を取ってしまっていた。 それだけが僕の楽しみだった。 …心の支えだった。 当時の僕には 彼女との数分のおしゃべり以外 何もいらなかった。 彼女との数分のおしゃべり以外 何もなかった。 それが世界の全てだった。 それ以外の全てがモノクロに見えていた。 やがて 彼女はいなくなった。 理由は覚えていない。 たぶんあまりにショックだったんだと思う。 子供心に自我を保とうとしたのだろうか あの頃はそんな事知らなかったのだが たぶん僕は… 彼女が好きだったから。 世界は白と黒しか無くなった気がした。 そのうちひょっこり彼女が現れる気がして そんな気がして 僕はそれから連続皆勤賞をもらってしまったのを覚えている。
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