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「…でもね、ヤタが来てから、ちょっと楽しいんだ。」
「・・・楽しい?」
「うん、いままではこうやって話す人がいなかったからちょっと寂しかったんだよね。」
そういえば、姫は前、守護者がつくのははじめてだと言っていた。
以前は軍の兵士が交代でついていたので話し相手にはならなかったようだ。
「そうですか。私ならいつでもいますからなんでも話し掛けて下さいね。」
しかし、私が守護者に呼ばれたということは、王は以前から戦争を考えていたのかもしれないな。
おそらく、戦争がおこっても姫を護れるように私が呼ばれたのだろう。
まぁ、任を全うするだけの私にはあまり関係ないのだが。
「ヤタ?」
「何でしょう。」
「このままもしタツミヤ国がマルラ国と戦争したらどうなると思う?」
シナノ姫は真剣な眼差しでこっちを見る。
「・・・ではこれも友達として聴いて下さい。」
私は話し始める。
「はっきり言って今の段階で戦えば、タツミヤ国に勝ち目はないでしょう。タツミヤ国は農業国、土地は広いですがそれにたいして人民が少なく守りきることができません。それにマルラ国は工業国であり軍事がかなり発展している。そのせいで仲間達もマルラ国に敗れました。戦力的にはマルラ国にかなりの部があります。」
「じゃあなんで勝ち目がない戦いを挑むの?」
「勝ち目がないわけではありません。」
「え?どういうこと?」
私は説明を続ける。
「おそらく、王はもう一つの燐国、ミタ国と同盟を結び、二国でマルラ国を攻撃するつもりなのでしょう。それにミタ国は医療が進んでいますからね。」
「そっか・・・。」
「でも、姫が言ったように、多くの命が失われることは確かです。」
姫はしばらく考える。
「ねぇ、ヤタ?」
「何でしょう?」
「私、みんなに意見を聞きたい。国の人はこの戦争を望んでいるのか、街に下りて聞いてみたい!」
「それは私が判断できるものではありませんね。」
「お父さ…、いや王に許可をもらえばいいの?」
「はい。」
「じゃあ明日聞いてみる!」
姫は国を思う心優しい方だな。
関係のない私だが、ふと、そう思った。
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