謡手の記録

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  インセクティアの首都ブルーフォレスト。 ある小さな楽器屋にある書斎で、一人の青年が机に向かっていた。   「………ふぅ」   息をつき机にペンを転がすと、紙を取り上げて流し見る。   「…知ってる事、本当に少ないな…」   彼はポツリと呟くと、紙を置き伸びをした。 ふと目覚まし時計を見れば既に日付が変わっている。   「もう寝よ……ふわぁ…」   ふらふらと立ち上がり、ベッドへと向かう。 電気が消された部屋に闇が満ちて行く中、月の光が木製の写真立てを照らし出した。   3人写っているその写真の端には   "とこなつととこふゆとぼく"   と、子供の字で書かれている。     そしてその写真立てには、手彫りで       Spica、と刻まれていた。  
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