春告げの歌

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  モノクロの世界。   そう表現して良いほど、辺り一面雪に覆われていた。 雪の結晶が降り注ぐ中、雪道をおぼつかない足取りで歩く者が一人。 長い金髪にベージュのロングケープ。薄桃のシンプルなドレスの裾に雪片がついてキラキラと輝いている。 モノクロな景色に似つかわしくない姿だ。 息を切らし何度も転びながらも、彼女は何とか町に辿り着いた。町の中心には大木が祭られている。 一番近い家のドアをノックし、ごめんくださいと力なく叫んだ。   はーい、という声と同時にドアが開いたが、人がいない。 目線を落とすと、小さな女の子と目があった。 彼女を見るなり目を輝かせる女の子。 そして   「めがみさま!!おかあさん、春のめがみさまがきたよ!」   そう家の中に向かって叫ぶと、訪問者が何かを言う前に手を引っ張り、半ば無理矢理家に招き入れたのだった。
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