ある日の放課後

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キーンコーンカーンコーン はあぁ、今日も彼女と話せないまま学校が終わったな。いつになったら彼女にこの想いを伝えられるのだろうか…。 こう心の中でつぶやいて放課後の廊下を歩いている一人の青年。 彼の名は工藤 達幸(たつゆき)。B高校の2年生である。性格は消極的で、思った事を言葉にする事は滅多にない。 当然の事ながら好きな子にも想いを伝えないまま、ずるずるとどこまでも引きずってしまう。 達幸が歩いていると誰かが後ろから走ってきて達幸を呼び止めた。 「おう、工藤!! 丁度よかった。今日の英語の宿題、オレ忘れて明日出さなきゃいけないから今日貸してくれない?」 それは同じクラスの男子だった。 「あぁいいよ」 ガサガサ…。 達幸はカバンをあさりだし一冊のノートを引っ張り出した。 「はいよ…。次は忘れんなよ」 「悪ぃ、サンキュー! そういえば北川には告ったの?」 単刀直入にそう聞かれて達幸もあせったらしく… 「いきなりなんだよ」 と返答に困っている様子だ。 北川さんとは達幸が密かに想いを寄せている人である。しかし、こんな性格故にまだ話した事も少なく、とても付き合っているとは言い難い関係である。 「北川可愛いから早くしないと他の男に取られちゃうぞ。まずは声かけてメアドゲットしてこいよ」 「う…うん。わかってるけど…」 すかさず男子が言う。 「だから~お前はもっと積極的になれよ? 男だろ!? そんなんじゃお前にふりむいてくれないぞ」 冷たい時間が流れる。確かにこいつの言う通りかもしれない。 「わかった! 明日は声かけてみるよ」 精一杯の自信を込めてそう答えた。 「よし、その意気だ!! じゃあオレ帰るわ。また明日な」 そう言って階段を降りていった。達幸も用事は特になかったので階段を降りて、門をくぐり家へと足を運んだ。
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