未来視能力

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なんてことだ。 北川さんが暗い路地裏を一人で歩いている。それを後ろから追う黒ずくめの男…。 こいつ、北川さんに何をするつもりだ! その黒ずくめの男が不意に歩を速め始めた。 ザクッ!!! それは一瞬だった。刃渡り10cmほどのナイフが北川さんの腹を貫いた。 うっと恐怖に顔を歪めたのを最後に、北川さんは力の抜けた人形のようにその場に倒れた。 到底生きているとは思えない。その黒ずくめの男はその場から影のように消えていった。 ………。 愛する人の死。それは思ってもみなかった事である。だがこれは紛れもない事実なんだ。 俺には見える。なら…変えてやる!! 人の未来を変える事など同じ人がやっていい事ではない。神様から恐ろしい天罰が下されるかもしれない。 だけど、君のためなら…。 あと30分…まだ間に合う。北川さん…どこにいるんだ? まてよ、まだ学校にいるかもしれない。 そうだ、教室!! 無我夢中に走った。思った通り北川さんは教室にいて丁度帰るところみたいだ。達幸は勇気をふり絞り。 「き…北川さん」 「な、なに?」 北川さんは困った顔を隠しきれない様子。 「あ、あの落ち着いて聞いてほしいんだけど……北川さんは今日ナイフで刺されて殺されるんだ!」 必死で訴えたが、北川さんの反応は冷たいものだった。 「なんの冗談? そんな事に付き合ってる暇ないから」 …と言って教室を出ようとする。 「待って! 嘘なんかじゃない。家まで送るよ」 普段の達幸からは想像できない言葉だ。 「いいかげんにして」 最後にそう言って教室から出ていってしまった。やはり人の運命を変える事などできないのか? 愛する人一人守れないのか?
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