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今宵はクリスマスイブ。恋人達の夜。俺はロマンチックとは程遠い、道端のおでん屋台で過ごしていた。年季がはいった屋台に気のよい店主がせっせっと2人の客の為におでんを作っている。赤提灯には雪がチラチラと降ってきた。
「今夜も一段と冷えるねぇ」
「雪かぁ~うーさぶ!そうだなおじさん、あっためる為に焼酎もう一杯!」
「あいよ」
「もう止めておけ。明日、仕事だろう?」
「うっさい!ほっといてくれ!」
俺が半ばやけ酒をしている横で、ぶっきらぼうに止めにはいった女は俺の高校からの親友、黒斑來(くろぶちらい)だ。黒の艶やかな髪は無造作に一本にまとめられ、二重の切れ長の目に呆れた色が見える。髪はおろしたら腰まであるかも知れない。薄化粧でも目鼻立ちはくっきりしており、世間一般でいう『美人』の部類だ。一緒に歩く時も彼女は老若男女とわず視線をあつめ、隣の俺はというと『何でいるの?』という疑問符がついた目で見られる……慣れたが傷つく。
「糞ぅ!彼女こそはと思ったのに」
「そのセリフいったい何回目?」
來は、うんざりしたように、俺の嘆きに相づちをうつ。
何10杯目か分からなくなるほど飲んでる俺はすっかり出来上がっているが、彼女の方はというと同じ量飲んでいるのに顔色一つ変えていない。何かムカつく。
「うっさいな!……本当に今度こそはと思ったんだ!3年つき合ったんだぜ!」
「正確には、3年と3ヵ月」
來は細かく訂正した。当の本人より何で詳しいだよ。
「うっさいなーもう!何でなんだよー!」
「慣れないことするからだろ?」
來は確信をつくように言った。
「お洒落な店連れてったり、普段居酒屋か屋台にしか行かないのに。歯の浮くようなセリフ言ったり、普段は気が利かないくせに」
來は指を折ながら俺の駄目さを指摘してくる。
「だー!!最初は喜んでくれたんだ!『素敵』なんて言って」
「しかし、長くは続かなかったと」
お酒を飲みながらいちいち指摘してくる來に、俺はいい加減カチンときた。
「うるせぇー!來に俺の何が分かるんだよ!!」
顔につば飛ばしながら怒鳴ると、來は顔色一つ変えずに。
「分からない。しかし、別れても、別れなくても迷惑なやつだな。付き合ってた時はやれ店教えろだの。別れたら絡み酒か」
溜め息つきながらまた一口酒を飲む來を見て、また怒鳴ろうとすると、急に視界がフェイドアウトした。
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