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その時、俺の中で何かが切り替わった感じがした。
「シュレッダーって、切り刻むんでしたよね。細く」
俺は課長にそう尋ねた。
「当たり前だろう、君。シュレッダーはね、バラバラにするんだよ。原形を留めない様に」
課長のその言葉を聞きながら、俺は机の上にあったカッターを手に取った。
日曜出勤だ。俺と課長以外に、ここには誰もいない。
俺はカッターの刃を出しながら、課長を見つめた。課長は俺の異変に気付いたのか、目の中に僅かな恐怖を滲ませている。
「課長」
俺はカッターを見せ付けながら、課長に呼び掛けた。
「要らない物は、シュレッダーですよね」
課長はあからさまな恐怖を顔全体に浮かべ、その場から逃げ様と動いた。が、若さで勝る俺の方が動き出しは早く、直ぐに課長の進路を塞ぐと、そのままカッターを課長の股間に突き立てた。
血飛沫が、布越しに跳ねて、俺の顔にかかった。俺は今度は何も気にせずに、それを拭う。
課長は悶絶の表情で、こちらと自分の股間に刺さったカッターを見比べていた。まだ事態が把握できていないらしい。
「課長」
俺は再度、課長に呼び掛けた。課長はびくりと肩を震わして、ゆっくりと俺を見た。
「シュレッダーって、バラバラなんすよね」
ふと意識を取り戻すと、俺はまだ課長に説教を食らっていた。手にはカッターなんてないし、課長もピンピンしている。
夢?もしくは妄想か。しかし、やけにリアルな映像だった。感覚も思考も、全てがクリアな状態だった。むしろ今の方が、夢でないかと疑った。
そんな事を考えながら、ふと視線を向けると、先程夢の中で課長を刺したカッターが、机の上にポツンと置いてあった。
その瞬間、俺の耳元で、例の風が吹いた。
風の音は止まない。
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