運転手

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何もかもが意外だった。 まず第一印象、僕はこの男は人付き合いとは無縁な匂いを感じていたからだ。 そして何よりも意外なのは無愛想な顔をくしゃっと崩しながら笑う姿だった。 『お客さんは何をなさってる方なんですかい?』 僕は引き戻された。 『〇〇工業団地に住んでる方ですかい?』 少し回答に困った。 『あっ、いや、そのぉ、たまたま今日団地に用があるだけなんで。』 『あぁ、そう。暑い中ご苦労さまですぅ。』 笑いながら彼は言った。 何だか調子が狂う。 おじさん、悪いんだけど今そういう気分じゃないんだよ。 話し掛けないでくれ。 『お仕事は?お仕事は何をなさってますか?』 僕の気持ちと相反して彼は会話を広げようとしていた。 『あれ、もしかして学生さんかなぁ?』 回答に面倒だった僕は適当に『はい。』と答えた。
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