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部屋と吸い殻と空き缶と
僕は今郊外の、いわゆる【ベットタウン】と言われる所に住んでいる。
そこは閑静な住宅街で、昼間こそは車が行き交う音や、小さな子供たちの騒ぐ声が聞こえるが、夜になると人っこ一人いないのかというくらい静かである。
最寄り駅から質素な商店街を抜け、河川敷のすぐ近くに僕が住んでいるアパートがある。
僕が住んでいる部屋は築9年のアパートタイプ三階建て、二階の角部屋。
1DKで決して広いとは言えないが、一人で住むには十分の間取りである。
そして、そんな僕の部屋の中には何もない。
テレビも、エアコンも、電子レンジも。
あるのはベットと冷蔵庫くらいである。
元から物をたくさん所持するのは苦手なたちで、必要最低限のものがあれば人間生きていけると思っていた。
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僕はこの何もない部屋で、日々何もなくただぼうっと過ごしていた。
晴れの日は憂欝。
決まって家で過ごした。
ベットに寝転んでは天井をただただ見上げ、ふと起き上がってはタバコをふかす。
曇りの日は気が向いたら近くの河川敷に出て、近所のスーパーで買ってきた安い缶ビールを飲みながら川を眺めていた。
僕はそんな何でもない、何もない、何もしない日々が好きだった。
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