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まず、夢に見た景色から説明しなければなるまい。
月光の差し込むこの場所で、深夜の証明だと言う生暖かい風。
そこで逃げる男の背中に容赦なく浴びせる、M―500から放たれる死神の鎌。なんらことはない。そこで全てが終った。
手には何の感慨もなく。発砲による銃から来る振動にも慣れてしまった。
雲一つない夜空には、星さえ無かった。あるのは頭上で忌々しく神聖とされる光を振り撒く完全な円を象る満月。その月明かりからは誰も逃げられしない、と語るように此方を眺めている。
臆病も良い所だ。誰も逃げも隠れもしないというのに、言い加えるなら―――犬は、主人に着き従うものだぜ。
「以上で、我が組織【ラグナロク】のトップエージェント・フェンリルの任務報告を終わります」
紛れも無い会議室。そこで、スーツに身を包んだ若い男が何やら報告書片手に男を囲むようにソファーに寝そべる四人の老人と一人の男と一人の女相手に流れるような説明を行っていた。
「うむ。報告ご苦労。やはり、フェンリルの仕事の出来は違うな」
「左様だな」
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