†prologue†

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 それは先日の件で、牢に拘束された男。プレジデントその人。髪や髭が無作法に伸びてはいるが、彼を漂う気品が落とされることはなく、まるでその牢だけが貴族の一室であるかのようだ。 「貴方の処分が決まったわ。チャイナへの派遣だそうよ。貴方の功績は組織にとって有益なものであるため―――」 「左遷か。それも納得も行く」 「……まるで、左遷が嬉しそうね」  レイナが言うように、プレジデントの顔は明らかに安らぎを得たものとなっていた。しかし、それでは理解ができない。世界の三分の一を握るラグナロクカンパニー。だが、その裏では暗殺、人体実験などを行う非合法極まりない秘密結社だ。  そのラグナロクが次に目を付けたのが、先日中国で発見された未知の鉱石。その回収を金銭で解決しようとするが、中国政府はそれを拒否。それから、裏社会による戦争にまで発展した。  そして、一月ほど前にラグナロクは、私兵武装部隊【モンスター】の投入を決定。それにより、中国近辺は世界で最も危険な地帯となっている。  それなのに、プレジデントは安寧の表情を浮かべたのだ。 「私はね、レイナ。一度だけNo,1ことトップモンスター・フェンリルの任務に同行させて貰ったことがあるのだよ」
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