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「あのね、この前すごく寒い日があったんだ」
季節は冬。当然寒い。しかしまぁ少年ゆえの拙さだろう。俺はコクコクと頷いた
「それでね、公園で寝ているおじさんが居たんだ。寒いのに布団もかぶらずにさ」
「へえ、変わった人も居るもんだ」
ホームレスということぐらいは簡単に察しがつく
少年にはまだわからない世界なのだろう
「それでね、おじさん震えてたんだ。やっぱり寒かったんだね。だから僕はおじさんを温かくしようと思ったんだ」
少年がニコニコと笑顔を振りまいてくる。
俺もそれに対してコクコクと頷いた
「とりあえず家からカイロとか持ってきてさ、頑張ったんだけどおじさんはまだ寒そうだったんだ」
少年がクスクスと笑い始めた。それを見た俺は寒気がした
「それでね、僕はおじさんをどうしても助けたくてさ、おじさんが満足するように温めてあげたんだ。これを使ってね・・・」
少年が不気味な笑みを浮かべて俺に見せたのはどこにでもあるようなマッチ棒。
俺が不思議そうに顔をしかめると少年は冷たい目をして言った
「僕ね、おじさんを燃やしてあげたんだよ」
クスクスという不気味な笑い声が俺の耳にリピートされる。さらに少年はアハハと高笑いを始めた
俺は尋常じゃないほどの汗をかき、かすれた声で言った
「は、はは、作り話が上手だな。お兄ちゃん騙されるところだったよ」
俺自身、動揺を隠せてないことがわかるくらいに貧弱な声と滑舌。
少年の話はまだ終わらなかった
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