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髪の毛に連れられて、二人は城の奥まで来ていた。
大きなテーブル、大きなイス。そこに伯爵は腰掛けていた
基哉の第一印象はというと
―――でかい!
の一言だった。
実際彼は感動すら覚えていた。人間はここまで太れるのだと
「あらぁん、直に見たら可愛いじゃない、この子」
「…え!あ、どうも…」
あまり嬉しくはない基哉だった
「ね、伯爵。ぼくにワクチンあげれば」
「そうねぇ、可愛いから特別に許可…ってわけにはいかないのよ、悪いけど」
伯爵は基哉に微笑んだ
「傷は左手?」
「はい」
「ふ~ん。ちょっと失礼」
そして、髪の毛で基哉の左手を、ちょ、と触った
「え?何か?」
「やっぱり、だいぶ進行してるわね」
「?」
訝しがる基哉に、美伽は
「左手見て」
「え?うわっ!」
―――なんだ、これ…?
左手は酷い有様だった。
肉は裂け、血で染まった皮膚の間から白い物が見えた。
基哉は吐き気を催した。
―――自分の…骨?
「感覚は無かったでしょ?」
「そういえば、無かった…」
基哉はただ腕に触られただけだと思っていた。骨が出るまで肉が抉られているとは、全く思っていなかった
「まさか…これが…」
「アライブよ」
頭が真っ白になった。地面がグニャリと曲がり、体は鉛のように重くなった。
朦朧とする意識の中、基哉は伯爵の宣言を聞いた。
「ワクチンが欲しかったら、自分で勝ち進むのね。今から催すゲームに、二人共参加させてあげる」
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