娯楽

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次に基哉が目を覚ましたのは、柔らかな白いベッドの上だった。 左手の傷は上手に縫い合わせてあり、やはり痛みは感じなかった。 「あ、おっはよ~!」 「おはよう?もう朝なの?」 「うん。朝だよ。この城、窓が無いんだよね。伯爵は日の光が嫌いだから」 「窓が無い?じゃあ換気とかは」 「ぼく、換気扇って知ってる?」 基哉は無視して、尋ねた 「昨日、伯爵が言ってたゲームって、どんなの?」 「あ、意識あったんだ。残念、驚かそうと思ったのに」 美伽はケラケラ笑うと、言った 「伯爵のゲームは、殺し合いよ。あ、でも驚いた♪」 「殺し…合い?」 「うん。フィールドに放たれた被験者達が、戦うの。実験が最後の方にくると、数が減ってなかなか会わなくなるじゃない?そこで伯爵がフィールドに集めて、殺し合いを楽しむのよ。一種の娯楽ね」 「娯楽…」 基哉は、嫌悪した。自分がその楽しみの犠牲になることに対しての激しい嫌悪感だった。 「…俺も出なきゃだめなんだよね?」 「ワクチンがいらないなら、出なくてもいいんじゃん?」 「…」 基哉は押し黙る。 美伽は少し溜め息をつくと、言った 「そんなうじうじしないでよ。私も出るんだから、優勝に間違いは無いわ」 「君も、協力してくれるの?」 「当たり前じゃん。私はか弱き者の味方だからね」 美伽のはにかんだような笑みを見ると、基哉は体の力が抜けたように感じられた。 「じゃあ勝ち抜くにあたって、戦法を伝授するわ」 「戦法?」 「ずばり『私に付いて来る』作戦よ!」 「…」 ―――やっぱりこいつ子供なんだな。 基哉は改めて思った。 美伽は続ける 「私は無敵なの。その私の近くにいれば、ぼくは殺される事は無いわ」 「飛び道具を使われたらどうするの?」 「あ、ごめん。ルール言ってなかった。武器は最初に支給される殴打専用の物だけよ。だから、銃とかボウガンとかの心配はしなくていいの」 「へえ」 「ぼくは、何もしなくていいよ」 「なんで?俺も動けるんだから、援護くらいするよ」 「はいストップ」 美伽は頭の後ろを掻きながら、その認識が間違ってるんだよね~、と呟いた 「左手動かしてみて」 「うん」 基哉は左手を上げた 「これがどうかしたの?」 「じゃあ、指は動く?」 「指?」 基哉は指を動かした。 「あれ?」 指は、微動だにしなかった。基哉の意識では指を動かしたはずなのに、目の前の指はピクリともしない 「そんな…」 「症状は進行してるのよ」
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