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基哉は美伽に先導され、伯爵が待っているという広間に行った。
広間はその名の通り、かなりの広さがあった。しかしそこは明らかにくつろぎを与えるスペースではなかった。
真ん中のホールを囲むように、周りにずらりと席がある。あれが観客席なのだろう。そしてその観客席の中に一際大きな席が一つあり、そこに伯爵は座っていた。
伯爵は基哉達に気がつくと
「あらぁん、おはよう」
とウインク混じりに挨拶してきた
「…おはようございます」
「おっはよ~♪」
―――この対応の違いは何なんだ?
基哉は思った
「じゃあ揃ったみたいだし、そろそろ始めるわよ。あ、武器はあそこから選んでね」
「は~い♪行こっ、ぼく」
「あ、うん」
基哉と美伽は、武器置き場でいくつかの武器を身に着けてから、真ん中のホールに入った。そこにはすでに五人の人間が、いや、人間では無い、五体の化け物がいた。
全員目無しや鼻無しのように体の一部が欠けて、そこに武器が結合していた。
基哉は震えていた。こんな奴等の中にいて、本当に生き残れるのか、彼は疑問だった。
ギュッ
突然右手を握られる
「え?」
基哉は美伽を見る
「大丈夫だよ♪」
基哉の震えが、止まった。
パァン!と始まりの合図が鳴り、ゲームは始まった。
化け物達は一対一で殺し合いを始める。
余った一体がこちらに襲いかかって来た。そいつには両腕が無かった。代わりに電動のドリルがハマっていて、キィィィンと低い唸りをあげて回っていた。
真っ直ぐに基哉を見据えて、そいつはドリルを振り上げた。
そのドリルを先ほど選んだ鉄バールで払いのけると、美伽は腰から素早く日本刀を抜き、空いた懐に目掛けて一閃。あまりの速さに、基哉は残像を見るので精一杯だった。気がつくと化け物の体は真っ二つに別れて転がっていた。
美伽は再び日本刀を上げると、ヒュッ、と振った。化け物の首が飛んだ。
基哉は言い様の無い気持ち悪さを感じた。多分、食べるために鶏を殺して毛を毟る行為に通じるものが、そこにあったのだ。彼はベジタリアンでは無かったが、鶏や豚、牛等が解体されるのを見るのが苦手だった。
「大丈夫?でもこの人達は首を飛ばさないと生き続けるんだよ?」
「ん、わかってる。でもちょっと…」
「そんなざまじゃ、生き残れないよ?」
基哉はわかっていた。しかし頭の奥底で、理性がそれを拒んでいたのだ。
全ての戦いに決着がつき、化け物の数は残り二体になっていた
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