10人が本棚に入れています
本棚に追加
化け物は二匹いた
両方ともたしかに人の形をしているが、片方は…目がない!?
眼球のあるべき所には、ぽっかりと穴があいていた。
しかも片手は千切れて、直にナイフのような鋭い刃物が装着されている。
もう片方は鼻が無かった。まっ平らなのだ。削げ落とされたように平たく、そして無惨な傷跡がある。
そちらの方は目がある。その瞳は今まで基哉が見たこともない程虚ろな目だった。生きている人間の目ではない。
足には義足のようなものがつけられているが、明らかに殺傷能力を重視したものだ。すねのあたりに日本刀が当てられている。踵には大きな針がついていた。指の代わりに小型の丸鋸が五本ついていて、それがギシギシいっていた
―――人間兵器
彼はそんなことを思った。
戦いが始まった
目無しの化け物は
右手を突き出しながら突進した。
鼻無しはすんでの所でそれを躱した。しかし左腕をナイフによって抉られていた。
痛みによる叫びなどは一切挙げなかった。挙げたのは憎しみの籠った、憎悪の叫び。
鼻無しは飛び出した。
カポエラのような動きで上段→中段→下段と蹴りかかり、体勢の崩れた所に喉元への踏み付け。そして丸鋸をあてがう。
丸鋸は回っている。電源も何もあったものではないのに、丸鋸の回転は次第に速度を増していった。
目無しは必死にそれを振りほどこうと足を掴むが、生の左手は日本刀に触れて、今にも指が取れそうなぐらいに切られていた。言葉通り皮一枚繋がっている。
目無しは最後の抵抗に出た。右手のナイフで何度も丸鋸を叩く。最初は弾かれていたが、二発、三発と殴るうちに、まず親指の丸鋸が壊れた。人差し指、中指をやっとのことで壊した時には、目無しの首は切断されていた。
基哉は気がついた。血が一滴も出ていない。肉を抉られても、刻まれても、彼らは血を流していなかった
最初のコメントを投稿しよう!