誕生

3/3
前へ
/49ページ
次へ
娘の可愛らしさに感動してたが、帝王切開で出産した妻はまだ、縫合しているのか出て来ない。 心配して待つこと30分。ようやく妻が手術室から出て来た。まだ、麻酔が残っているようで、目が虚ろだった。『頑張ったね』との私の言葉に妻は、 『うんっ』と応えるのが精一杯であった。 しばらくして、妻の麻酔も切れ、話が出来た。 『本当にお疲れ様。』との私の言葉に妻は、 『いえいえ。』と返し、 『ところで名前は?』と聞かれ、 『蓮華(れんか)ってどう?』と妻に聞いた。 『うん。いいと思う。』と言ってくれた。 『みんなから、れんげちゃん?って聞かれそう。』と続けて妻は、にこやかに言った。 妻が展示場を訪れてから、既に十二年。結婚して七年目を迎え、私は、32歳になっていた。 何回となく、迎える春だったが、こんなに爽やか春はなかった。このまま幸せな時が流れてくれることを祈った。水の流れるごとく、永遠に…。
/49ページ

最初のコメントを投稿しよう!

11人が本棚に入れています
本棚に追加