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『いってらっしゃい。』
先輩は、ちょっと小走りで展示場から消えた。
この展示場には、私を含めて、営業は4人。後輩2人は、朝からお客と打ち合わせがあり、直行していた。私は、一人で留守番をする状態となった。
『月曜日の午前中から客が来ることは無いし、先輩は、どうせ昼には負けて戻って来るか…。』ブツブツ独り言を言いながら、展示場内の部屋掃除を始めた。部屋には、最新の壁掛けの液晶テレビやセンスの良いソファ、テーブルがあり、展示場を訪れるお客を引き込む雰囲気があった。
一通り掃除を済ませ、事務所に戻り、i podで好きな音楽を聴いていた。私のお気に入りは、スキマスイッチとコブクロだった。最近の歌は、結構難しくなっていたが、2回くらい聴けば、私はメロディーを覚えられた。誰も居ない事務所で、私は声を出して歌っていた。スキマスイッチのアルバムに収録されている、"奏"が終わろうとしていた。
その時、玄関から、
『すみません…。』と声が聞こえた。
私は、慌てて、イヤホンを外して、玄関に向った。
玄関には、若い女性が一人で立っていた。
『ごめんなさい。取り込んでまして、聞こえなくて』と訳の分からない言い訳をして頭を下げた。
『いえ。気持ち良さそうに歌っていたのに邪魔してしまって…。』私は、体中が赤くなって、毛穴から血が噴出しそうなくらい恥ずかしくなった。
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