山内 秋人

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「よ~秋人。今日もベンチで飯か~? たまには俺達と食べろよ」 教室に戻った俺に近付いて来た男が言った。 「水近よ……俺は何も一人で食べたくて食べてるわけじゃない、仕方無い事なんだ」 「あ? なんだよ? 仕方ないって?」 「俺は感じてるんだ。現代人が忘れてしまった太陽の暖さ、風の心地よさを。人間は文明の発達と共に沢山のものをなくしてしまった。だが俺は違う! いつまでも自然の偉大さを忘れはしない。分かるか? 現代人代表のそこの愚民」 「分かった分かった、ったく、うるせーな」 「うるさいだと? そんなこと言うのはこの無駄にイケメン微笑を浮かべるこの口か」 俺はそいつの唇を渾身の力で抓り上げた。 「いてえ」と悲鳴をあげる男の名前は水近 淳。俺と同じクラスで、数少ない友人の一人といってまあ差し支えない。 顔よし頭よし運動神経よしですらり9頭身のモデル体型、親が金持ちでエリート一家の三男坊、遺伝子の優劣と生まれつきの格差を鍋の中で煮詰めに煮詰めて残った結晶の塊みたいなむかつく友達だ。 当然モテる。が、特定の彼女は作っていないようだ。ひとつ欠点があるとすればなぜか俺と仲良く出来てる点だ。俺と仲が良いというのはつまりこいつは変な奴ってことだ。 ――キーンコーンカーンコーン ぶつり。スピーカーから在り来たりなチャイムが鳴り出す。 「おっと、先公が来るぜ」 俺の手から解放された水近の唇が言葉を紡ぐ。 「覚えてろよ? 俺の高説を踏みにじった罰は放課後に与えてやる」 俺たちは互いに席に着いた……って言ってもあいつの席は俺の前だが……。 授業中は退屈以外の何物でもない。 先生が繰り出す言葉の数々はまるでお経かスワヒリ語だ。 そんな時間だから俺は自然とお船を漕ぎ漕ぎネムイの海に旅立つのだ。 ―― 体が揺れる感覚で目が覚めた。 「やっと起きたか……寝過ぎだ」 水近が俺の肩に手をおいていた。 「揺すってたのは貴様か? お前のせいで俺は地震で割れた地面に引きずり込まれる夢をみたんだぞ! ああ~怖かった」 「あ? 知るかよそんなの。そんな事より早く掃除行こうぜ」 掃除……どうやら俺がネムイの冒険をしてる内に授業が終わったようだ……だめだこりゃ。
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