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掃除を終え教室に戻る途中、低く響く威厳のある声が俺たちを呼び止めた。
「山内、水近。ちょうど良かった。ちょっと手を貸してくれ」
生活指導の澤井だ。
御歳五十歳、生涯一教師を地で行くおっさんだ。
教師などジャガイモくらいにしか思ってない俺だが、澤井だけには頭が上がらない。
「なんすか~?」
頭は上がらないが、萎縮するわけでもないので、テキトーに気の抜けた返事を返す。
「このプリントを三組と四組の生活委員に渡してくれ」
差し出されたのは、ホチキスで止められたプリントの束だ。
「そんなんクラスの担任に渡せば良いじゃないっすか」
「まぁ、そうなんだがな、ちょうどお前らが目に入ってな」
「なんすかそれ? 教師が生徒をパシるんですか? ああ、ここまで教育の現場は腐敗していたとは……」
「なんだ山内? 指導室行くか? 学校の私物をピンクに染め上げたり、園長室のトロフィーに酒を注いで乾杯したり、屋上で炭火焼肉焼いたり、ハハハッ! 叩けばいくらでも埃が出る布団だな~お前は」
「謹んでそのプリントお届け致します」
「三組と四組の生活委員にな。ほら頼んだぞ」
俺と水近は澤井からプリントを受け取り、三、四組のある階へと向かった。
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