両親

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アタシの 父方の祖父は全盲だった。 昔は東京 神田の有名な小学校の教師をしていたらしい。 祖母は、父が中学生の時に胃癌で他界していた。 祖父は全盲だったのにもかかわらず、古い3階建ての家に一人で暮らしていた。 でも祖父の飼っていた犬が老衰で死んでしまったのをきっかけに、アタシ達家族と同居する事になった。 とても優しい祖父。 時々、一緒に公園に行った。目が見えなくても、杖を使って一人歩いたり、お金を指先だけでいくらかわかったり‥あの頃のアタシには驚く事がたくさんあった。 父親は、年老いた祖父に冷たかった。 昔、とても厳しかった祖父が、年老いて弱っていく姿を見たくなかったのか‥ただ、気が短い父にとって祖父がうざったい存在になっていたからか‥。 祖父の世話は常に母親がしていた。 最初は食事も一緒にしていた祖父だが、階段の上り下りがつらくなってきてからは、あまり部屋からでて来なくなった。 アタシが小学校6年の時、 祖父は亡くなった。 母親が朝、祖父を起こしにいくと、祖父が言った 「今ねぇ、神田の家(昔祖父が住んでいた家)に行って来たよ。僕はとっても気分がいいんだ‥お花畑にいるんだけどもね、少し眠いから 眠ってもいいかな。。」 そのまま祖父は眠りについたらしい‥。 葬儀で見た祖父の顔はとても穏やかできれいだったのを今でも忘れない。 告別式、初めて父親の泣いてる姿を見た。
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