愛ノ唄

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なんで、こんな。 「そう、なんだ…。そっか。俺の入り込む隙間なんかなさそうだね」 「そっ…んな、事…!」 諦めたような貴教の顔が、くしゃりと笑った。 なんでこんな風になったんだろう。茜は恋人で、貴教は親友。なんでそのままでいられないんだろう。 「ゴメン、俺、勝手にキスとかしちゃって。まだ…友達でいられるかなあ?」 照れたように笑う貴教に、俺はもちろんだよ、と即答していた。 友達も、恋人も、どちらも欲しかった。それは決してワガママなことではないと、そう思う。 だから、その時貴教がどんな顔をしていたか、後でどんなことになるのか、俺は知りもしなかったんだ。 貴教が何を考えてたのか。茜との事にかまけて、考えもしなかった。  
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