序幕

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 ラジオの周波数を合わせているとき、僕は幸せを感じていた。  聴きたい番組を探し当てるのは、カーテンを引いた瞬間の窓みたいに視界が開けるイメージ。  ノイズが薄れてどこか遠くの放送が自分の部屋に届くこの感じがいい。  特に真夜中。  ご近所さんがみんな寝静まった中。虫の音だけをBGMにして僕はラジオと向かい合う。  雑音の中聴こえてくる音楽や声を拾い上げて、聴き入って。  気がつけばいつも夜更かしをしてしまうのだった。
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