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 という言葉を続けた雅樹に愛奈は自分が睦月の部屋で見た全てを話したくなった。 そして今、自分が抱いている気持ちも。 ただ、どんな言葉で伝えたらいいか分からず、愛奈は黙り込んだ。 静かな時間だけが二人の間に流れていく。 雅樹はそれ以上愛奈を促すような事はせず、川の上で浮かぶアメンボを見つめていた。 「お兄ちゃん……私もお兄ちゃんが好き」 精一杯考えて口にした言葉は陳腐でありふれた言葉だったが、それは真実だという事に愛奈自身驚いた。 ああ、そうか、と思う。 心から雅樹が好きだ、と思う。 言葉でなく、こうやって体全体で愛奈を包み込もうとする雅樹を心から愛しいと思える。 雅巳という女性の存在がどうであれ、愛奈は生まれた時からずっと一緒にいる兄を嫌いになれるわけはないのだ。 それでも心の中に渦巻く暗い感情だけはどうにも出来ない愛奈は、寒くもないのに震えだすのを止めることが出来ず、自分の体を掻き抱く。 そんな愛奈の肩を雅樹は何も言わず抱きしめた。
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