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語り終えると、俺はふと気がついた。あの日何故、夏樹を待って歩き出さなかったのだろう。なぜか悔しさがこみあげ、瞳が涙で熱くなるのを覚えた。
「わかりました。とりあえず、私は夏樹さんのその後の足取りを捜します。あなたはこのまま家に帰ってください。なにか解ったら、携帯に連絡致します。」
九条は、さっきより少し真剣な顔でそういった。
俺は、知ったことは逐一教えてほしい。と言えなかった。
いや、九条の柔らかい表情とは違う、圧迫感のある空気がそれを許さず、俺は言われるまま、事務所を後にした。見上げた空は美しい夕焼けだ。
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