偶然は必然

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扉を開けると、そこには仕切りの全くない広々とした部屋があり真ん中に応接用のソファとテーブル、入り口左側にはカウンター、その上には花瓶が置かれて花が生けられている。 一番奥のテーブルに一人座っている人がいる。 灰色のジャケットにインナーは薄い若葉色のTシャツ。 男はふと微笑むとおもむろに立ち上がり、ソファの側まで歩いてきた。 ソファの横まで男は歩みより、 「どうぞおかけになって下さい。」 と言いながら、手をソファに向けた。 軽く会釈をして、手前の長いソファの右側に腰かけた。 「ふーん、礼儀作法を心得ているな。」 小さな声で何処からが、年老いた声がそう呟いたような気がした。 男は向かいの二つ並んだ一人掛け用のソファに腰を下ろした。 見た目は二十代後半だろうか、少し長めの髪に切長の二重の目、ほっそりとした顔はどこか中性的な印象をあたえる。 「早速ですが、ご用件をお聞かせ下さい。」 男が質問してきた。
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