偶然は必然

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依頼料金を聞こうと言葉を出そうとした瞬間 「料金は頂きませんから、大丈夫ですよ。」 男は出そうとした言葉を遮る形で話した。 その言葉は、聞いた耳や思考回路に疑問を抱くのに十分なことだった。 今のこの世界では、ほとんど金でしか物事は動かない。 そんな世界で今の言葉は 「信じられませんよね。」男は突然、出そうとした言葉を先に代弁した。 男はさっきの優しい微笑みをしながら、しっと手をさしだした。 その手にはいつの間にか名刺があった。 半透明のエンハンスホワイトの台紙にはクッキリと黒い文字で、 「捜し屋 九条康隆」と書かれている。 それを受け取ると俺は自己紹介をした。 「挨拶が遅れました。仲根まさしと言います。よろしくお願いします。」 そう言って軽く会釈をした。 九条は座っていたソファから立ち上がった。 「依頼料は金銭ではありませんから、安心してください。」 そう言うと、九条は自分のデスクに向かって歩いていく。
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