3章【別れ】

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「奈美…約束したよね。 君に最高のクリスマスを届けるって。 時期は違うけど…今しか出来ない秋のクリスマスだ。 …気に入ってもらえたかな?」 「裕平…ありがとう。 嬉しい…嬉しいよ…」 奈美が泣きながら言う。 「じゃあ、今日は楽しもう!泣いてたりしたら勿体ないよ! 奈美姫には、素敵なドレスを用意してあります。どうぞこちらへ…」 僕は奈美にドレスを手渡す。 奈美は木の影でいそいそと着替え、僕の前に姿を現した。 夜の闇とイルミネーションの光に映える純白のドレス。 洋品店で見つけ、無理を言って展示してあるものを借りてきたのだ。 「すごい…本当のお姫様になったみたい」 「奈美姫…今宵は僕と踊りましょう」 純白のドレスを着た姫君に、汚れたシャツとジーンズ姿の王子。 そんな僕たちを、光に照らされた紅葉が見つめてくれる。 こんなクリスマスも、ありかなって気がした。
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