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その頃信長はと言うと近江の日野城にいた。彼は失意に沈んでいた。
当然であろう、一番の家臣であった秀吉は行方不明、勝家は織田家から離反し、最近折り合いが悪いにしても昔は仲が良かった光秀は逆臣である。さらに長男の信忠は死亡し、信雄と信孝は協力しなければならないのに目下一触即発状態である。もはや織田信長の織田家はないのである。
信長が憂いていると日野城の城主である蒲生氏郷が話しかけた。
「殿!いつまで落ち込んでいるのですか!あなたは今何をすべきか分かっていましょう!」
昔はこんなことを言ったら死罪か流罪である。しかし信長にそんな気力はない。
氏郷がどうすれば信長を蘇らせるか悩んでいると一人の伝令がきた。
「氏郷殿!坂本城に明智勢!数5000!もはや落城寸前でございます。」
坂本城、これは昔信長が京入りするための道にありこの城が落ちればつぎは安土城なのだが本能寺の変のとき、慌てた信雄が間違って火を付けて大炎上してしまい今はもうない。とすると坂本の次はここ日野城である。
氏郷が聞いた
「城主は確か堀秀政殿だったな?」
「はい彼らは一兵残らず討ち死にする覚悟であります。」
隣で静かに聞いていた信長が呟いた。
「秀政は儂のために討ち死にする覚悟である。ならば何故儂はここにいる?」
信長は立ち上がった!その顔は既に先程のような軟弱な姿ではなかった。
第六天魔王・信長は本能寺の火から蘇った。
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