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彼の名は本田正信、東海一の弓取り・徳川家康の右腕である。
光秀「おお佐渡守殿!」
正信「うむ天目山以来じゃな」
天目山とはかの名門武田氏が滅んだ土地である。 佐渡守とは正信の官位である。ちなみに光秀は日向守である。
光秀「でなんのようかな?」
正信「かくさなくともよいぞ日向守。そなた足利義昭より信長の殺害を命令されたようじゃないか。そして悩んでる。違うか?」
光秀は凍り付いた。何故この男が知っているのかと。数秒、しかし光秀にとっては何時間とも言える時間の後、光秀が口を開いた。
「な‥何故それを?」
正信は笑いながらはなす。
「まさか日向守ともあろう者が伊賀忍軍を忘れまい?」
「伊賀忍軍か…あれは伊賀の乱で滅んだのではないのか?」
「その時丁度服部半蔵などの極少数は三河にいて助かったのよ!」
「そして私の謀叛の真意を確かめにきたと?」
「まあそんなもんじゃ。」
そう言いながら正信は光秀の傍らにあった南蛮菓子を一つ取って口の中に入れた。
「もし、私の謀叛の決意が固かったらここで殺すおつもりですか?」
「 いーや、そんなことはせんわ。むしろその逆じゃ!儂はそなたを助けるために来たんじゃ。」
「えっ?」
「徳川家と毛利家は密約で結ばれておる。長引かせるように輝元には伝えておる。するとあの猿(羽柴秀吉)は必ず信長を呼ぶはずじゃ。その時は京のどこかで泊まる。そこを奇襲すれば…」
「まてっ!その策は良いかもしれんだがどうやって秀吉に援軍を呼ばす?」
「心配ご無用。既に内通者を羽柴軍内部に侵入させておる。どうじゃこれでもまだ悩むか?」
光秀の顔には迷いは消えていた。
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