0人が本棚に入れています
本棚に追加
/9ページ
こおり
がさ
がさがさ
がさ
その光景は、異様以外の何物でもない。
その客は、店の氷をあるだけかごに入れ、冷凍コーナー以外にはどこにも行かず、まっすぐレジへと向かった。
この真冬に、いったいどんな用途があるのだろう。
レジ係に聞けば、その客は袋詰めの氷を十一買い、無料の保冷用の氷を袋に詰めて帰ったという。
見れば、やつれたような顔をした、おそらく小柄な若い女の子だった。
着込んでいて体系がわからないのと、顔半分を覆うように巻かれたマフラーでいまいち言い切れないが。
氷の重さによろめきながら小走りに去っていく背中を、誰もがちらりとうかがっていた。
最初のコメントを投稿しよう!