こおり

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こおり

がさ がさがさ  がさ その光景は、異様以外の何物でもない。 その客は、店の氷をあるだけかごに入れ、冷凍コーナー以外にはどこにも行かず、まっすぐレジへと向かった。 この真冬に、いったいどんな用途があるのだろう。 レジ係に聞けば、その客は袋詰めの氷を十一買い、無料の保冷用の氷を袋に詰めて帰ったという。 見れば、やつれたような顔をした、おそらく小柄な若い女の子だった。 着込んでいて体系がわからないのと、顔半分を覆うように巻かれたマフラーでいまいち言い切れないが。 氷の重さによろめきながら小走りに去っていく背中を、誰もがちらりとうかがっていた。
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