科学の力

2/6
前へ
/60ページ
次へ
あたしが産まれた時、すでにあたしは13匹存在していた。つまり「あたし」は複数存在している。 産まれてからあたしの体を清潔にしたり、乳を与えたりと、世話をしてくれたのは母親なんかじゃなかった。あたしは「あたし」と並んだ14番目の檻に入れられた。 あたしの名は『DOLLY』というらしい。 たくさんの科学者や記者が、あたしの誕生を祝った。たくさんの人が、あたしの姿を一目見ようと訪問に来た。眩しいほどのフラッシュの中、あたしは何もわからなかったが、新聞や雑誌は、あたしのことをこう書いた。 「科学は素晴らしい力を私達に与えた!!」 ―――DOLLY。 それは人間が人形のように扱える命のこと。あたしは遺伝子操作によって人間の手で創られたクローン人間なのだ。
/60ページ

最初のコメントを投稿しよう!

36人が本棚に入れています
本棚に追加