科学の力

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檻の中を覗いて見た。No1からNo10の扱いはあたし達よりよかった。床はコンクリートではないし、トイレがついてある分、人間として扱われていると言えるだろう。 ふとNo7を見て驚いた。時々No7は奇形だと聞いていたが、奇形というか、人間の形ではなかった。彼女は失敗作だったのだ。その姿は、思わず目を背けたくなるようなものだった。 腕や足は背中から生えていた。乳が床にすれていてもわからないようで、犬や猫のように四んばいで這っていた。髪はまばらに刈りとられ、左目はまぶたがくっついたままで成長を止めていた。 No7はあたしの手前を歩くDOLLYに、獣のようにとびかかった。鉄格子が激しく音を立てたが、害はなかった。皆は驚いて固まってしまっていた。あたしも動悸がなかなかおさまらなかった。人間にどなられると、再び列は動きだした。 あたしと同じDOLLYだが、あたしはまだ人間の理性というものが備わっている。あたしは、このDOLLYと同じDNAなのか、不思議でたまらなかった。もともとは同じであったはずだが。
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