第三夜

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 ずいぶん長い時間がたった後、クリスはようやく意識を取り戻した。  クリスは、精神的に参っていた。 だが、クリスは泣いていなかった。 むしろ、表情のない無機質な顔をしているのだった。  「ここヲ、出ル。」  彼女は、感情のない声で呟いた。  そして、ゆっくりと扉へ向かった。  表で警備をしていたエージェントが、異変に気が付いて銃を抜く。  その直後、ものすごい勢いで扉が吹き飛んだ。  すぐに体制を立て直したエージェントに対して、明らかに人間離れした動きで、あっと言う間に一撃を食らわせる。  「うあぁぁ」「た、助けて、ひぃ」  断末魔をあげて昏倒する二人のエージェントに、周囲は圧倒され、身動きすら取れなかった。  なぜなら、その二人の遺体はもはや人の形を成していなかったのだった      その頃コウは、戦闘ヘリから逃げるのに必死だった。 もはや本部の応援を呼ぶことすら叶わない。  ちょうど良く、トンネルが現れたのを機に、もぐりこむ。  ヘリは出口に先回りして、目標のバイクが出てくるのを待った。  「ちっ、やり過ごすか…」  呟いて、バイクのトランシーバーの電源を開放状態にすると、ECM妨害電波の周波数とのシンクロを開始する。  痺れを切らしたヘリは、案の定ミサイルを使ってトンネル内を攻撃しようとした。  しかし、ロックできないことに気が付く。  「くそ、妨害してやがる。」  パイロットはすぐに、ガトリングとグレネードに武器を選択しなおすと、そこから一旦上空へ退避した。  それを見たコウは、バイクをすぐに発進させると、トンネルを一気に抜けた。 そこで、上空から急降下しながら照準をこちらに合わせるヘリの存在に気が付いた。  「まずい!!」  ものの見事に銃撃を受ける形になってしまい、コウのバイクが吹き飛ぶ。  パイロットは、目標のバイクが爆発しているところを視認すると、帰還ルートに進路を取った。
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