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争乱割拠・七
輝宗を拉致した義継一行を、二本松城から新城弾正率いる軍勢が出迎えに対岸にまで出張ってきた。
それを見た輝宗は、弟の伊達実元、留守政景、国分盛重らに、早く自分ごと討ち取れとせかしたが、みな躊躇して手を出せずにいた。
そのうち、小梁川盛宗から知らせをうけていた政宗が、伊達成実と片倉小十郎らを引き連れて駆けつけてきた。
政宗が、
「義継、義継、父を離せ。離さねば、一族郎党、犬畜生にいたるまで、大内定綱支配の小手森城のように撫で斬りにするぞ。」
というと、義継が、
「先から、この二本松を滅ぼさんと企む貴様の野心など見抜いておるわ。わしは、大内のように逃げ回らぬ。ならば、貴様に一矢を報いる為にも、貴様の父親を城の壁に貼り付けて防塁の人柱となさん。」
というと政宗は、鬼のような形相になり、
「義継、今なら、まだ、貴様の首だけですましてやる。父上を離せ、離さぬか、義継。」
というと義継は、
「政宗、汝の野心が仙道七家をはじめとする奥羽に狂気乱心を呼ぶのじゃ。汝の曾祖父稙宗、祖父晴宗は対立し天文の大乱を起こし、また、その祖父とこの輝宗は、そこにおる伊達実元の越後守護上杉入嗣問題で対立して、周辺を緊迫させるなど、全く戦を好む一族じゃ。政宗、土下座し謝れ、されば輝宗を丁重に扱ってやるぞ。」
といって嘲笑した。
その時、輝宗が政宗に怒鳴った、
「政宗、そちは不動明王の生まれ変わりじゃ。そのそちが、父の命ごときで大業を諦めるのか。政宗、わしの屍を踏み越えて行け。独眼竜政宗、天に昇るのだ。」
というと政宗は、周囲の反対意見を拒むように、鉄砲隊に銃撃するように命じ、鉄砲隊は二本松主従に対して、銃撃を開始した。たちまちのうちに二本松主従は次々と倒れ、義継も、
「まさしく、狂乱の沙汰じゃ。不動明王ではない、鬼じゃ。」
と言い残して絶命した。
輝宗も、
「これで良い、これで。政宗、父は天から、汝をみておるぞ。」
と息絶え絶えの中、言って絶命した。
対岸の二本松勢は、義継らの遺体も回収も出来ずに浜田景隆、後藤信康ら率いる部隊に蹴散らされ撤退した。
凶事後、政宗は切り刻まれた二本松義継の遺体をつなぎ合わせ、二本松城から見えるところに、木に張り付けて晒した。その脇には、鹿子田らの首もさらされた。
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