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猿動く・二
幕府より、徳川家の牽制された頃、浅井長政は、主だった家臣らを集めて、今後について合議していた。
そこへ羽柴秀吉がずかずかと入ってきて、長政が何事かと問うと、
「長政殿、今までかくまっていただき、かたじけなく、深く御礼申し上げる。これより、この秀吉はこの江北の地を手土産に織田信忠様のもとに帰順させていただく。」
というと長政が、
「何を寝ぼけたことをぬかしておる。血迷ったか、秀吉。」
というと秀吉が、
「長政殿、お手前には周りが見えないらしいですな。」
というと、外から河毛清旨が駆け込んできて、
「申し上げます。阿閉貞征、新庄直頼らが謀反し、攻め寄せて参りました。」
といっているところへ、小堀政次が駆け込んできて、
「申し上げます。京極曲輪を守っていた浅井政澄、政重父子が謀反し、城外の軍勢を城にいれておりまする。」
というと長政は、
「おのれ、秀吉。恩を仇でなすか。」
といってきりかかろうとしたが、秀吉の後ろに控えていた福島正則、加藤清正が前に槍を構えて立ちはだかった。
苦渋に満ちたような長政を抑えながら、安養寺氏種、東野行信が守る。
秀吉が、
「者共、かかれ、かかれ、長政の首をとって、あの越前の退き陣の時の我ら同朋の御霊を慰めるのじゃ。」
というと、数十人の者が襲いかかろうとすると、外から喚声がわき上がった。
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