猿動く・三

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猿動く・三

長政の危急を救ったのは、月ケ瀬忠清であった。月ケ瀬は奮闘して、糟屋武則、平野長泰、桜井佐吉らと槍を合わせたがひけをとらず、長政の血路を開こうとした。 それを見た秀吉はじれて、そばにいた谷衛好に後詰めの兵を持って、討ち取るように命じた。 月ケ瀬らの奮闘により、長政は城外へ脱出したが、外にいた蜂須賀小六、宮部継潤勢らが襲いかかってきた。 そこへ、またもや別な軍勢が現れた、それは浅井久政であった、 「長政、救いに参った。ここは、このわしが防ぐ。後事は、赤尾清綱、磯野員昌と諮るべし。長政、もはや奸計にのることなかれ、よいな。」 というと、敵に突入した。長政は、奮戦する父をしりめに敗走した。 長政は、途中でまたもや、羽柴方に願っていた石田正継ら地侍の襲撃にあい、河毛清旨が防戦に入り、また、羽柴に加担した小川祐忠、赤座吉家が襲いかかってかたが、安養寺氏種が防戦に回った。 次々と襲いくる羽柴方の魔の手をくぐり抜け、蒲生賢秀の後を継いだ氏郷の領土へ駆け込んだ。浅井領の危急を知った蒲生氏郷は、境目までに蒲生郷成、蒲生郷舎らを繰り出していたため、羽柴勢は退却した。 長政が蒲生領に入った頃、浅井久政は深手を負って、東野行信に肩を担がれて、小舟を持って湖上に逃げ延びていたが、 「行信、もはや、もはや、ここで良い。介錯をし、我が屍を琵琶湖に沈めよ。」 というと久政は、腹に刃を突き刺した。それを見た行信は、落涙しながら介錯した。行信は丁寧に首を布で包み、自らの鎧とともに久政の遺骸に結びつけて沈めた後、自らも自害した。
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