四国平定・四

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四国平定・四

新手の援軍を得た小早川隆景は、飯田義武に檄を飛ばし、大攻勢をかけさせた。大軍の前に、籠城軍は劣勢を強いられた。 この状況に、幼君石川城虎丸を前に、近藤尚盛、徳永信貞、金子元宅、松木安村、塩出重綱、藤田芳雄らは協議をした。 金子元宅は頑強に抵抗することを改めて主張し、囲みを切り抜けて、長宗我部への援軍を依頼することを提言し、そこまで言うならということで、群臣らは承諾した。 翌日、金子元宅は、戻ってきた元春とともに出撃し、包囲軍と激闘して囲みを突破した。 戒能通森は、逃しては厄介と判断、黒川通博に猛追撃させた。黒川の部隊は追いつき、激戦の末に金子らを討ち取り、帰陣した。だが、討ち取られた金子の首を見た通森は、 「こやつは、元宅の弟元春じゃ。謀られた。黒川殿、動員出来る部隊を連れて、探索にあたってくれ。」 というと、黒川も歯軋りして、陣の外へ出て行った。 その頃、元宅は間道を通って土佐へと向かっていた。もう少しで国境というところで、軍勢が出現した、 「金子元宅、速やかに降参せよ。」 と言う方を見ると、赤木忠房であった。元宅は、吹っ切れたように、 「一人でも、この囲みを突破し、長宗我部殿に援軍を求めに行け。名を惜しめ、恥じぬ働きをせよ。」 といって、渾身の力を込めて、毛利の部隊へ突入した。激闘が続き、全身を槍で貫かれ、倒れゆく元宅の目に、囲みを突破する兵を見た元宅は、微笑しながら瞑目した。
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