九州平定・三

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九州平定・三

見事な撤退を完了した大友軍の日向遠征軍は、朝日岳城に立花統虎らが堅め、岡城に立花道雪が退いていた。 岡城には、主力を朝日岳城に割いたため、立花の旗本などが詰めているにすぎなかった。 その情報を得た島津義弘は、主力を率いて朝日岳城攻略に向かい、岡城には、島津朝久を主将、副将に島津以久、上井為兼、平田歳宗、指宿忠政、鎌田政近、北郷時久らをつけて向かわせた。 一方の岡城では、日に日に病が重くなる中、道雪のまわりの枕頭に、立花四天王たる由布雪下、十時連貞、安東家忠、高野大膳亮や、内田鎮家、小野鎮幸らが集まり、道雪の指示を受けていた。 道雪は、ある程度の指示を授けると、自らの上体を起こして、 「戸次家に生を受け、立花鑑載に代わって、立花家に入り、大友家に幾十年、忠節を誓って、粉骨砕身、働いて参ったが、もはや、これまでのようじゃ。」 というと、周りを囲んでいた諸将は涙した。そんな中で、道雪は薦野増時に、自らの刀を統虎に渡すように朝日岳城へ向かうように命じ、小野成幸に護衛を命じた。両人とも、ともに籠城を願ったが叶わず、夜陰に紛れて朝日岳城へと急いで向かった。 数日して、岡城に数千の島津軍が襲来した。先の汚名を晴らすべく、朝久はがむしゃらに攻めるよう命じた。 先手の鎌田政近は、一息に抜いてくれようと、叱咤激励して攻め寄せた。だが、籠城側の抵抗は激しく、朝久は指宿と平田に後詰めを命じた。新手の援軍を得た鎌田政近は、息を吹き返したように攻撃を再開し、 「敵は道雪入道がおらず、意気消沈じゃ。一気にこの城を攻め落としてしまえ。」 といって、将兵に檄を飛ばした。 そこへ、城門が開いたかと思うと、輿に乗った武将が現れ、 「敵も、味方もよう聞けい。立花道雪は健在じゃ。我が立花一党に弱卒なし、敵に背を向けるものは、我の輿を敵中に置き捨てよ。さあ、この道雪がよく見ておる。あの輩ば、蹴散らして、この道雪に功名を名乗り出よ。」 というと、籠城側の志気は一気にあがり、島津軍が押され始めた。 これを見た朝久は不甲斐ないと出撃しようとしたが、島津以久、北郷時久が反対して留めていたが、後備の上井隊から、立花隊の別働隊と交戦中との報告を受け、北郷時久が救援に向かった。その時、前方の軍勢も、左右から奇襲攻撃を受けて混乱との報告があった。
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