九州平定・十

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九州平定・十

村上水軍の軍船により、長宗我部隊は、佐伯港に上陸、利光統久が頑強に抵抗して守る鶴賀城を救援すべく陣を構えた。 そこに、田原紹忍が、戸次統常、吉弘統幸、吉岡統増、朽網統直らを引き連れて、加勢に駆けつけた。 長宗我部元親、十河存保ら四国勢、田原紹忍ら九州勢は、長宗我部隊は鶴賀城の対岸の白滝台に進出して、軍議をした。 田原紹忍は、一刻も早い鶴賀城救援を主張、十河存保も同調した。だが、長宗我部元親は、対陣している戦巧者の島津家久と、戸河地点に危ういものを感じて、持久戦を主張したが、田原らの強い勢いに賛同した。 渡河作戦の前夜、長宗我部元親は、信親を呼び寄せ、 「明日の渡河には、どうも嫌な予感がしてならぬ。明日、危険と思わば退け。」 というと信親は、 「かしこまりました。無理強いはしませぬ。しかし、田原殿は、やけにこだわりましたな。」 「田原め、耳川を初めとして失策の挽回に躍起じゃ。それだけに、周りに目がいっておらぬようじゃ。ゆえに、明日はくれぐれも油断せぬよう。」 というと、信親はかしこまって下がった。 翌日、長宗我部・大友軍は渡河を開始した。そこへ、島津忠隣の率いる一隊が現れ、大友軍と一戦して、間もなく敗走した。それに乗じようと大友勢が追撃を始めた。それに釣られて十河勢も加わった。それを見ていた元親が、 「これは、島津の釣野伏という戦法じゃ。これは計略じゃ、追ってはならぬ、追ってはならぬ。」 と怒号を発したが、それは絶句に変わった。
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