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今どきの女の子らしい、携帯のメールを知らせる音楽がなった。
"悪い。今日残業だ。"
2つ年上の彼、隆明からのメールだった。
「折角、いつもより気合い入れてきたのにぃ」
今日は二人が付き合い初めて半年の記念日。特に約束をしていたわけでもなく、いつものように仕事帰りのデート。でも、美奈の心はいつもより弾んでいた。茶色っぽい髪はゆるめのカールがかかっていて、特に派手な格好でもない。極めてきれいというわけでもない。でも、19歳とは思えない落ち着いた雰囲気はあった。どこにでもいる女の子だ。
「今日はもう帰ろうっと」
少し落ち込んだ気分で帰路に着こうと思っていた。
「みぃ~なちゃん。なにヘコんでんの?隆明さんにフラれたか?」
「なんだ。ビックリした。友子じゃん。まだフラれてません」
「なんだってヒドくない?しかもまだって。これからフラれる予定?」
同僚の友子は明るい子だった。美奈とは真逆で賑やかで、若干派手な女の子だ。「みなちゃん、暇ならご飯食べて行こうよ?今日、宏樹が出張でさぁ」
「ホントに?隆明さんも残業でデート駄目になったんだぁ」
「一緒ぢゃん」
友子はにっこり笑って、美奈の手をひき、意気揚揚と会社を後にした。
「げっ!雨降ってる。あたし傘ないよ」
外は雨だった。朝の雲一つない快晴がまるで嘘のようだ。
「しょうがない。タクシー拾うか!」
傘を持っていなかった美奈たちはタクシーで目的地まで向かうことにした。
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