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目的地に着いた美奈たちは、おいしい料理に舌鼓をうっていた。外の雨は降り止みそうにない。雨のせいかいつもは賑やかな店内も今日はどことなく寂しげだ。デザートを食べ、そろそろ店をでようか、そう話をしていた時
"チリンチリン"
来店を知らせる音がした。美奈は気にしなかったが、そのお客の声は聞き慣れた声だった。ふと、入り口を見るとそこには隆明がいた。
「あれ、隆明さんじゃない?女の人と一緒だね。上司かな?」
友子が言った。
「そうかな?違うひとじゃないの?さ、行こう」
「へっ?ちょっ、ちょっと待ってよ」
友子の止める声も聞かず、美奈は伝票を持って、席をたってしまった。
友子の位置からは見えなかったが、美奈は見えてしまったのだ。隆明と、女性が手を繋いでいたのが。
店を出たあと、二人はタクシーで駅へと向かった。車内では無言だった。
「美奈ぁ、いいの?隆明さん」
「…手…」
「え?」
「手、繋いでた。上司ならそんなことしないよね?」
「えっ?ホント…?」
明らかに見て取れる美奈の不安げな表情に友子は心配そうに話し掛けた。
「大丈夫?」
「ヘーキだよ」
笑ってみる美奈の顔は全然平気じゃなくて…それでも友子はなにも言えなかった。
駅で別れたあと、美奈は一人ホームにいた。家に帰る気にもなれず、ベンチに座っていたが、いつまでもそうしているわけにもいかずトボトボと歩きだした。
外の雨は止んでいた
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