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蘭がこちらを向いた。街灯があるお陰で表情がなんとなく分かる。驚いたような表情だ。
しかし…相手はこの地区じゃ見ない感じの男だった。レムールと契約してからというもの、神経が過敏になって五感が増したのだが、あの男の雰囲気は…なんか違うような気がした。
ただ、部屋着のようなスウェット姿だからそんな遠くの奴じゃあねえだろうけど…
「お~ぃ蘭?!」
「っ?! …ぁ……お兄ちゃん駄目!!」
あぁ? 何を言ってんだあいつ…
「誰だソイツ? お前のコレかぁ?」
言いながら親指を立てると、男が振り向いた。
「…………」
街灯の逆光でよく見えないが、何処にでもいそうな普通のあんちゃんだ。
ただ……蘭が惚れるような感じのやつでは…ないな。
「お~ぅい兄ちゃん。家に寄ってか…」
「ジャッ」
ビビった。マジビビった。超絶ビビった。激烈ビビった。弩級ビビった。怒髪天ビビった。
「ッ!」
何せあの兄ちゃんがいきなり突っ込んで来たのだ。ここは二階。乗り出した窓から街灯列に面した下の通りにまで直線で大体五十メーターちょい。
それを一瞬でだ。軽く跳躍したと思ったらいきなり目の前に現れたのだ。
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