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それまで零をやっていて精神が擦り減った状態だったので、極度の恐怖は俺からとっさの感嘆を奪った。
さらにその兄ちゃんは跳躍してから俺の目の前に現れるまでの間に、あろうことか『変身』しやがった。
真鍮を思わせるくすんだ銀色の体躯…
動物を思わせる風貌…
「ミツケタ…シヲン!!」
「…………アトラン…ッ?!」
ガシャァァァァンッ!
兄ちゃんが変身した怪物に俺は窓ごと殴られた。それは重く、下顎にヒットした。脳がこれでもかってくらいに揺れた。
「ぬが…ッ!」
「フシュァァァ…」
「お兄ちゃん!!」
蘭の悲鳴が遠くに聞こえる…
「フシュァァァ……シヲン…」
「ってて…何…なんだ……テメェ…はよぉっ?!」
蘭の彼氏なら許さねえ。初対面のやつをいきなり殴るなんざ…それよりもまずこの怪物は……一体…
「シィィィヲゥゥン…」
ブォンッ!
「うぉっ?!」
怪物の腕が横薙ぎで払われた。身を低くしてよけると、行き場を失った腕がベッドの布団を切り裂き、羽毛が散った。
「シィィィ……ヲォォォン…」
「……っだよコイツ…」
バタバタバタバタバタバタッ!
ガチャッ!
「お兄ちゃん?!」
「ッ?! バカ、来るな蘭ッ!!」
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