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今にも起き上がって『おはよう』なんて言うんじゃないかと思うくらい二人はやすらかに眠っている。
事故の朝、俺は普段とは逆に両親を見送って学校へ行く準備をしていた。
すると―
トゥルルル
登校の準備を終え家を出ようとした途端に電話が鳴った。
『こちら警察ですが―』
いきなりの警察からの電話にはもちろん、内容は心臓が止まるようなものだった
警察から連絡を受けた勇介がタクシーで病院へ駆け付けた時には両親は既に霊安暗室へ運ばれ
診た医者の話しによればほぼ即死だったらしい。
その後、別室で俺は医者から葬儀の手続きなどの詳しい話しをただ冷静に聞いていた……
「君、大丈夫かい?」
医者から変に心配されたが、大丈夫といえば大丈夫だったと思う。
再び家に着いたのは夜の10時、家から5キロしか離れていない病院からどこをどう歩いて帰って来たのか……何時間も掛かってしまった
家に着つなり勇介は父親との思い出深い自宅の道場に足を運ぶ。
休日の朝や平日の夕方には門下生達が剣を交わらせる道場も夜は静寂に包まれていた……
その静寂の中、俺は普段父さんの座る上座に向かって座禅を組む。
父さんから剣道を教わる前に毎回していた精神統一だ。……っ……
目を閉じると両親との思い出が頭をよぎる
父さん……母さん……
勇介は力なく床を叩きジッと父親がいつも座っていた場所を見つめる。
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