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許容を越えた痛みが彼と『彼』を襲う。
『彼』は声にならない声を上げ、苦痛に顔を歪めた。
彼も叫びたいくらいに痛いが、彼には声を上げる事ができない。
『彼』が抵抗しても、少年が首締めを止める事はなかった。
まるで何かに憑かれたかのように、一心不乱に締め続けている。
そして『彼』の群青の目が、少年の姿を一瞬だけ、捉えた。
少年は、とても美しい外見だ。しかし今は虚ろに揺らめく――内に憎悪を溜め込んだ眼差しのせいで、それが台無しになっている。
ブラウンの綺麗に結わえられた長髪も、すらりと通った鼻筋も、センスの良さが見受けられるアクセサリーも――何もかもが。
何より、彼は少年の目に強い恐怖を覚えた。
見るだけで殺せるのではないか、そう疑ってもおかしくない程に。
さながら、見た者全てを石ころへと変貌させてしまう――則ち死を与える、メデューサの如く。
一瞬なのに、何故こんなにも強い恐怖を抱いてしまうのか。
あまりの痛みに叫び声も上げられぬまま、彼は自問する。
やがて――ここで夢は暗転した。
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