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薄暗い部屋の中で、彼は勢い良く起き上がる。
布団がばさり、と音を立てて捲(めく)れた。
カーテンが閉められている為明確には分からないが、隙間から漏れる光の明るさからして、朝であるのは間違いない。
未だ呼吸を荒くしつつ、彼は胸元を両手で押さえる。
夢のはずなのに、胸の痛みと首に張り付く息苦しさがはっきりと、あたかもそれが現実であるかのように残っていた。
「何でいっつもこの夢なんだよ……一体何だってんだ」
そう愚痴るように呟いた彼の全身は、汗に濡れている。
汗特有のじめっとした感触が、彼により強い不快感を与えた。
「有飛ー! もう朝ご飯出来てるわよ! 早く降りて来なさい!」
階下から聞こえる、母親の声。
それを聞き届け、彼――もとい英有飛(ハナブサ ユウヒ)は、のそのそと部屋を後にした。
×××××××
「有飛、早く食べちゃいなさい。高校入って一ヶ月経ったからって、だらけてちゃ駄目よ?」
まだ新しい制服に身を包み、トーストを頬張る有飛に向かって、母親は戒めるように言う。
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